人はなぜ山に登るのか?
そこに山があるからだとは、一体誰の妄言か。
私はそこに山があっても、もうけして登らないぞ。(笑
そう言わしめた立山(雄山)登山。
前日の室堂でのハイキングぐらいに留めておけば、天国のまま終われたのに、
色気を出したばっかりに地獄を見るはめにあってしまったのでした。
雄山は日本の三大霊山のひとつであり、日本の百名山にもエントリーしている
家族連れやお年寄り、小さなお子様でも登れる初心者向けのお山だと紹介されています。
友人の2歳の子供や90歳のご老人も登っていたから、貴女だって大丈夫!という言葉を信じて
のこのこやって来たまでは良かったが、いざ登り始めると《…いや、ぜってー嘘!》と、
都会暮らしのお豆腐メンタルなわたすの心の中が激しくリフレインするのでありました。
行きに2時間、帰りは1時間で登ってこれると人々はうそぶきますが、
頂上は標高3003m級の山なのです。酸素薄いのです。
私の様な素人様は余裕をもって行きに4時間、帰りに2時間みといた位で丁度良いかも…。
実際、朝7時前に山小屋を出発し、戻れたのがお昼13:30頃でしたから。
途中酸欠でお星さまが見えたりもしますので、酸素ボンベも持っていた方が良いでしょう。
けっしてTシャツにスニーカーで登ろうなんて、愚かな考えはやめましょう。
雨具だって必要です。水もたっぷり1L背負って行ってくださいね。
雄山の頂上には雄山神社が断崖絶壁にそびえております。
運が良ければ、社務所の前で暖かいココアとカップラーメンが食べられるでしょう。
(しかし、トイレにティッシュはございません。)
やっとの思いで頂上に辿り着いた民たちへのご褒美の絶景と束の間の休息タイムです。
中にはお弁当を広げている人も。私たちが暖かいココアをすすっていると、
目の前にずんぐりむっくりの可愛い小鳥が現れました。
これが噂の雷鳥か?!と一瞬色めき立ちましたが、どうやらいわひばりのようでした。
雄山は古よりの山岳信仰の聖山で、聖山故に長く人の立ち入りは禁忌とされており、
ある日小さな男の子が夢の中でスピリット(神様)に誘われ、ついて行くとそこは雄山山頂であったと。
その時の様子が頂上の石碑に刻まれていましたが、頬を流れる涙をぬぐう事もなく
ひたすら拝んだといった様な事が書いてあったと思う(多分)…。
気持ち分かるぞなもし…。
きっとこの初登頂をなし遂げた男子も、
私と同じく子供でも老人でも登れるような山だから大丈夫!と、
神様にそそのかされて、えらい目にあったに違いない。
高所恐怖症の私は、鬼の形相で息も絶え絶え、
目の前の岩にへばりつきながら、景色を楽しむ余裕もなく、必死に登って行きましたが、
岩の上から上を軽ろやかにぴょーん、ぴょーんと飛ぶように登っていく男子や、
ゴール目指して脇目も振らず一直線に登っていく女子、途中の絶景をバシバシスマホで写しながら
きゃぴきゃぴ登っていくグループ、亀の歩みでひとり静かにもくもくと登っていく高齢者…などなど、
皆それぞれの登山スタイルで頂上を目指していました。もちろん途中で引き返す人も。
登山とは、自分との向き合い方や、人生への取り組み方を見せてくれる
行の様なものなのかも知れないと思いました。
人はなぜ山に登るのか?少し分かった様な、分からない様な…(笑
しかし、自分がハイキングレベルの人間だという事は、
はっきりと分かってしまったのでした。
合唱